第9回:おしえて!マイルスト~ン「今がDayBreak」前編
2023/09/25 UP | POSTED BY milestone
この連載は、milestoneのアイテムを作ってきた人(ファウンダー西岡)と使ってきた人(中途入社の吉田)の二人の話を(#水曜ぶどう坂練で一緒に走っている萩原が)聴いて、深堀りしていく企画です。
・ウールのメリット
西岡(以下、西):おかげさまで今回でもう9回目。みんな読んでくれてて有り難いね。
吉田(以下、吉):お店に来てくれるお客さんも、取引先さんも読んでるよって言うてくれてます。
萩原(以下、萩):嬉しいですね。
西:読んでもらえれば、商品をどんな想いで作ったかっていうところも含めて、販売店さんにも理解してもらえるからね。もちろん直接、お客さんにも。
吉:こんなカジュアルな感じで、続けていきたいですね。
西:今回のお題は、ウールについて。ウールというと羊ですね。羊はぬくいよね、けど夏にも着れるよね。
吉:着れます。毛糸の表面は、スケールっていう鱗状になってて、自動的にパカパカ開いたり閉じたりすることで、快適な水分状態に保たれます。
西:調湿性があるってことやね。中でも、メリノっていうのは?
吉:メリノ種っていう羊の種類です。
萩:繊維が細いんでしたっけ?
吉:綿でもナイロンでも、繊維は細い方が肌ざわりよく滑らかで、光沢があって高級とされてます。
西:まずは既に発売してる、All you need is…Merino Boxerの話から。
吉:生地目付100g/㎡でめちゃくちゃ薄いから、夏のトレランの時でも使えるし、何日も縦走する場合でも使えますね。
西:現在発売されている雑誌「Tarzan」でも取り上げてもらってて。
吉:ただこれ生地が良過ぎたために、あまりにも値段が高くなってしまって、卸しが出来ないくらい。それで、milesitone TERADACHOと自社オンラインサイトだけで販売させてもらってます。
萩:毛玉もできないし、丈夫ですよね。
西:ナイロンが21%入ってるから、しっかりしてる感はある。
吉:ちょっと硬めかもしれないけど、メリノボクサーは開発中からずっと穿いてても、まだ破れてないくらい丈夫です。でも、生地がだいぶ薄くなってしまって、かなり透けてます。家で小学四年生の娘にひゃーってびっくりされました(笑)
萩:多感な年頃やから気を付けてくださいね(笑)
吉:足口が少し広めなので、次回の生産ロットでは改善する予定です。
西:ウールには消臭のメリットもあるよね。
吉:ですね。じゃあいよいよ、Tシャツの話をしましょか。先月、一泊二日で登山した際に、今回発売したDaybreak Merino Tシャツを、ずっと着てたんです。一日目に御嶽山、車中泊して二日目に焼岳を登って、汗だくになったものを、同行者に嗅いでもらったんです。消臭力テストのために。西岡さんだけ、断固拒否してましたけど。
西:それはそうやろ(笑)
萩:このコラムのためだと思って、嗅がせてもらいましたけど(笑)実際、全然匂わなかったのは驚きでした。山屋の人は、何日もずっと同じものを着るって言うよね。見た目の汗じみは少し目立ちましたけど、実際の着心地はどんな感じですか?
吉:不快感はないです。それはたぶん、生地が薄いからだと思う。ウールって汗を最終的には保水してしまうんですけど。ウール100%だとしっかり吸って重くて冷たい物を身体に当てられてる感じがするんですけど、薄い上にナイロンも混紡しているのでそこまでしない。濡れてるなって感覚はありますけど。汗冷えする感じはないですね。
萩:ベチャっと貼り付いたりもしない?
吉:そこまで貼り付いたりはしません。
西:コバルトブルーの方が、汗染みは分かりにくいかな。
吉:洗濯機でガンガン洗うなら、多少の縮みは覚悟してもらう必要があるかなと思います。干し方も少し気をつけてもらって。形がつきやすいので。洗濯表示を見てもらいつつ。
西:ウールは洗濯して濡れた状態は独特の臭いするよね。乾かしたら全然問題ないんやけど。
・Tシャツを一からつくる
吉:Tシャツのはじまりは、ちょうどナッティ・ショーツを作ってた頃に、まだ自分も前々職の時に西岡さんと話したんです。TシャツはSTAMPさんとのコラボや、BRINGボティのものがあるけど、これからアパレルを広げていく上では、milestoneのTシャツの『サイズ表』っていうのを作る必要があるんちゃいますか、ブランドとして。milestoneなら自分は全部Mサイズでいける、みたいなサイズの統一感というか基準を作る意味でもって話をしましたよね。
西:そやなって、一から考え始めて。
吉:じゃあ、走るためのポリエステルのTシャツと、登山ができたり普段も着れるようなウールがいいんちゃいますかって。生地も形もオリジナルでmilestoneのTシャツはコレや!っていうのを出しましょう、という話をしたのが去年でしたよね。
西:そこから生地探しから、パターンからやっていった中で、ウールの方が今回のもので、ポリエステルの方は開発大詰めで、その話はまた今度かな。
吉:それで、今回はスペシャルゲストを呼びました。
西:実は、Tシャツのパターンをやってくれた小野田純子(以下、J)さんです。今回はその話をしてもらおうと思って。
パタンナーJ(以下J):突然お邪魔します。よろしくお願いします。
吉:サンプルが上がったから来て!って、八尾のアリオに呼び出して、フードコートで試着しながら打ち合わせしましたよね。
西:あーでもない。こーでもないとやってたけど、こうして形になってこれから世に出て行くわけやけど。こだわりポイントは?
J:パターンとしては、寸法も色々調べたけど、ありとあらゆる寸法があるわけで、なるべく色んな人が着れるようにしたいけど、これって決めないと商品は作れないわけで、Mサイズは西岡さんをモデルにイメージしながら作ったかな。
西:Mサイズの基準は、174センチ、体重69.8キロです。
吉:ジャストで着るのが好きなのかもあるよね。手足の長さのバランスも含めてゆったり着る人もいるし。
J:Lが誰、Sが誰って身近な人をイメージしながら。この人がこのくらいの体型の代表かなってイメージするけど、本当にサイズも模索中なんで、あーでもないこーでもない言いながらで。確立されたブランドだったら、このサイズはコレ!ってどんどん作っていけるけど、だいぶ模索してるよね。
西:まだまだ発展途上で。
J:お店に来てくれる人とどんどん出会うと迷うところも出てくるし。
吉:たまにお店にも立ってもらってますしね。milestoneも最初はS/M/Lの3サイズ展開だったけど、Sが大きすぎる女性と出会ってXSを出したし。
J:接客の時はあなたはこれですって言えるけど、オンラインで買うとなると、その辺難しいからね。
萩:他社ブランドでもサイズ見直しますっていうのはたまにありますよね。
J:一緒なんやなと思ったら安心して堂々検討できるというか、そのブランドの気持ちはすごく分かる。DayBreak MerinoTシャツは、これ着て走るというより、普段と山でも使ってもらえるイメージで作ったよね。
吉:身幅を広めにしてましたよね。ランニングの方はタイト目で、2パターンで進めてたけど色々試しながら、最終的には一緒になりましたね。
・糸と縫製
J:私の心配は「襟ぐり」でした。
萩:襟ぐりってどこですか?
J:首元のところ。おさまりが難しくて、着る時は伸ばすし、着てしまえばちゃんと縮まないといけないし。外側と内側の長さって違うやん。もし一緒だと立ってしまうし。工場もそこの縫製を上手にしてもらわないといけないから。
西:今日着てるけど、全然問題ない。
J:西岡さんがだいぶ着ててこの状態っていうのは、すごく安心した。伸縮が大きい部分だから。何回も何回も着続けることでどうなっていくのかも心配だったし。
西:良いのができたよね。「衿伏せ」にヨッシーの提案で色入れて。差し色があることで、プロダクトとしての完成度が上がったと思う。サンシャインゴールドと何オレンジやったかな?
吉:ややこしいので、そこに名前は付けてないです(笑)
J:色が入っててかわいい。商品として一生懸命やってるところが見えるのもかわいい(笑)
萩:「衿伏せ」は何のためにあるものですか?
J:襟をつけるロック糸(布の端をほつれないように処理するための糸)って肌に当たるんですよ。特に後ろ側は当たるから、Tシャツには付いてるものも多いかな。
J:あと、縫製糸には、スパン糸とウーリー糸があって、やっぱり動く時に使うものなので、肌を傷つけない、肌当たりの良いウーリー糸を使ってます。ふわっとした糸。縫製も難しいんだけど。
吉:生地も肌ざわりの良いウールを使ってるので、柔らかいウーリー糸の方を選んでます。
J:ウーリー糸もメリットデメリットはあるので、全てそれが良いというわけではないんですけど。
吉:縫製も肌当たりを気にしてフラットシーマだったりします。
萩:フラットシーマとは?
J:二つの生地をつなぎ合わせる時に、厚みがなく平たくフラットつなぐことで肌当たりが良くなる縫製の仕方です。
萩:スポーツウエアやアクティブウエアで使われている縫い方なんですかね。
J:メリノTシャツとボクサーとビーニーの肌の当たることろに使ってる。
萩:どれも一枚目に着る肌に直接あたるものですもんね。
後編へ続く