第14回:おしえて!マイルスト~ン「広く長くずっと」

2024/02/22 UP | POSTED BY milestone

この連載は、milestoneのアイテムを作ってきた二人(西岡&吉田)の話を(#水曜ぶどう坂練 で一緒に走っている萩原が)聴いて、深堀りしていく企画です。

・スペシャルなコラボ

西岡(以下、西):今日はいつもと違うスペシャルなプロダクトのご紹介です。 

 

萩原(以下、萩):というと?

 

西:NANGA®︎(ナンガ)さんとコラボさせて頂くことになりまして。

吉田(以下、吉)知らない人はいないくらいの日本のダウンメーカーですよね。

 

西:ダウンジャケットも沢山作ってはるけど、今回は特別なシュラフを作ってもらいました。milestone TERADACHO オフィシャルオンラインストアの限定販売になります。

 

 萩:milestoneから寝袋!? コラボはどういう経緯ですか?

 

西:元々、ナンガさんとはmilestoneが立ち上がった頃からのお付き合いがあって。横田ブラザーズ(笑)が社長と副社長をやってはるんやけど、会社の規模は違えど兄弟でやってるのはうちの会社と一緒なんよね。

NANGA30周年記念パーティーにて 左:智之社長、右:敬三副社長

 

萩:へえー。 

 

西:お父さんが会長で、その先代が創業者っていうところまで一緒。それでめっちゃ親近感があって。イベントで会う機会があったりして、特に弟の敬三さんとは仲良くしてもらってて。飲みに行ったり、将来の夢の話なんかもしたりして。実は2年前に、ナンガさんとはコラボしてるんよ。うちのヘッドランプにナンガのベルトで『NANGA × milestone』 のヘッドランプが実現してるんです。ナンガのお客さんにmilestoneのヘッドランプが届けば、それは嬉しい話で。

萩:そんなんあったんですね。

 

西:いつか逆バージョンの『milestone × NANGA』 をやりたいとは思ってたけど、何ができるかなっていうのはずっと模索してて。ナンガさんは、元々のルーツを辿ると布団メーカーさんやから、ルーツは僕らも常々大事にしたいと思ってるし、やっぱり寝袋で何かうちの形に落とし込めないかなと。

ちょうどmilestoneは今年10周年なんです。何か特別なものをと思って、敬三副社長に電話して、なんかやりたいんやというたら、「言うて言うて! なんでもやろ!」って。なんせノリもよくて気さくな方やから「すぐやろ! 今から行く!」言うてほんまに来てくれた(笑)それでナンガの中でもMINIMARHYTHM(ミニマリズム)っていうモデルをベースにしたいという話をしたんよね。

 

吉:ナンガさんはオートキャンプ用から厳冬期モデルまで幅広く展開してはるんですけど、その中でもMINIMARHYTHMをベースにしたのは、3シーズン(春・夏・秋)使える中でいちばん軽いモデルだったからなんです。僕らのしたい遊びとかアクティビティの場合、基本的に荷物を背負って移動することを想定するので、軽さは大事で。

 

西:結構カリカリに無駄を削り落としたモデルで、軽量で良い寝袋ではあるんやけど、これをベースに、もうちょっと僕らなりにアレンジさせてもらいたいなと。「いいよいいよ」と言うてくれて。

 

・milestoneがつくるなら

  

吉:実際にこのシュラフを使ってみると、軽くするために居住性を犠牲にしているんです。中で手を広げられなくて、胸の前で手を組もうとすると、肘がつっかえてしまうくらいなんですが、これを楽にできるようにしたいなと。

 

西:シュラフに入ったまま座ったりもしたいし。

 

吉:顔周りにダウンを足して、業界用語でいうところの「タラコ唇」にして、寒い時にはドローコードで絞って、口だけが出せるようにしました。あと、ジッパーって意外と重いので、元のモデルは極限まで短くて入るのも大変なんです。もう少し出入りしやすくするためにジッパーを少し伸ばしました。中を広くしたりジッパーを長くすると当然重くなるけど、軽さも追及したいので、中の羽毛を770FP(フィルパワー)から900FPまで上げました。

西:せっかくスペシャルコラボなんでね。ナンガさんの中でも最高ランク900FPに入れ替えてもらったらサンプルは、見るからにふわあーっとしてたよね。羽毛の重さは一緒なのに。 

 

萩:フィルパワーってなんでしたっけ?数値が高い方が暖かいんですよね。

 

吉:ダウンって水鳥の羽毛なので、一本一本違うから選り分けるんです。ダウン室で風をブワーっと送って、より空気を含んで舞い上がって遠くまで飛ぶものを選んでいくんです。

西:工場で見せてもらったことあるわ。それやってた。

 

吉:フィルパワーが高いと、同じ重さでもより嵩(かさ)が高くなります。そうすると空気を含む量が多くなるので、より暖かいです。UL(ウルトラライト)スタイルでも使える重さにしたかったので、総重量で500g以下を目指しました。居住性を損なわず快適に使ってもらいたいけど、きつい山行にも使ってもらいたい。ということで、結果485gになりました。ダウンだけの重量だと250gです。

 

西:リミットの温度がマイナス10度です。軽さと居住性と暖かさの、全部を兼ね備えたものになったね。

 

吉:これすごく大事なんですけど、フィルパワーが高いと、もし濡れてしまって嵩が減った場合、暖かさもぐんと落ちてしまうんです。だから、ダウン自体に超撥水加工を掛けて、湿ってもへたりにくくしてるんです。 

 

西:ダウンの構造は、背中面がタテ型で

 

前がヨコ型になっていて、寝返りによるダウンの偏りが抑えられて、保温力をキープできるようになってます。

吉:西岡さんのアイデアで、寝袋のスタッフサック(収納袋)がいつもどこかへ行ってしまうと。それでナンガの担当者さんと色々検討して、フード部分の後ろにポケットを付けて、収納できるようにしました。

西:オニオン・フーディやユーティリティバッグと同じパッカブル仕様やね。寝る時には、そこに枕も入れられるね。

 

吉:あ! それ「マクラブル®︎ですね! 着替えの入ったマルチコンテナなんかを入れておくと、枕代わりになりますね。朝方に枕がどこかにいって目が覚めるんですけど、これなら大丈夫。

西:枕がすべって逃げていかないから「マクラブル®︎」は画期的な仕様かも。

 

吉:どこでも枕が必要な「マクリスト」としては嬉しい機能です(笑)

 

西:それを言うなら「マクラー」やろ(笑)

萩:それはどっちでもええです(笑)それよりもその使い方、今発見したんですか?

 

西:いやいや(苦笑)もちろん狙ってたよ(笑)

 

・広く長くずっと使えるもの

 

吉:外側のナイロンは10デニールで薄めの生地です。

 

西:色も良い色に仕上がったよね。何の色を連想する?

 

萩:象?エレファント色?

 

西:動物ではなくて、飲み物でした。最初はロイヤルミルクティでいこうと思ってたんやけど、カプチーノです。ラテだと既に帽子にある色名なので。

吉:確かに上品な色になりましたよね。パッカブルにしただけでは少し大きく見えますけど、ザックに入れる時は圧縮できるドライバッグなんかに入れてもらえれば、小さくコンパクトになります。

 

西:寝袋をザックにそのまま突っ込んで、荷物の隙間に詰めることで、ザックの形を整えるってやり方もあるよね。その場合、ザックの中身全体に防水対策は必要なんやけど。

 

萩:どのくらいの季節まで使えますかね?

 

吉:経験や体力、体格によって個人差があるのは大前提として、雪山で使うには不安ですけど、低山なら冬でもいけそうです。秋のアルプスくらいは、どストライクですね。

10月の信越トレイルへ行った時、3シーズンのシュラフを持っていってたんですけど、天候に恵まれなくて雨と雪だったんです。日数が経つほど寝袋の復元力がなくなって、だんだん湿ってフカフカしなくなっていきました。

 

萩:辛いですね。一晩だけの我慢じゃなくて何日も歩くなら、体力の回復のためにしっかり寝たいですもんね。

 

吉:途中吹雪になって、寒くて眠れないことがあったんです。手が冷た過ぎて。そんな時は両手を口の中に入れると、結構あったかいです(笑)

 

萩:その裏技を使う状況には、なりたくないですね(笑) 

 

西:先日から受注を開始しています。お手元に届くのが7月くらいで、夏山の季節には間に合わせたいと思ってます。なので受注締め切りは3月15日の予定です。

 

吉:お値段は、6万円プラス消費税となります。それなりの価格はしますけど、同等スペックのものと比較すると安いと思います。

 

西:お買い得かと。いちばん広範囲に使えるベーシックなものでありながら、ずっと長く使える最高のものになりました。今月の週末営業日は明後日224日(土)には是非milestone TERADACHOへ足を運んで、現物を見て頂きたいですね。

 

今回は、NANGAとのコラボアイテムの寝袋について教えてもらいました。寝袋は一度買うとなかなか買い替えないので、長く使える確実なものを選びたいですよね。ナンガは別注品も含めた修理等のアフターケアがしっかりしているので安心です。

3シーズンシュラフが活躍する季節が、すぐそこまで来ていますね。カレンダーをめくって5月や8月の連休を確認して、山へ脳内トリップしているのは、自分だけではないはず。

春の訪れを待ちながら、次回もどうぞお楽しみに。

 

文・構成/萩原 健

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