第9回:おしえて!マイルスト~ン「今がDayBreak」後編

2023/09/29 UP | POSTED BY milestone

・ウールとナイロン

吉:生地の話をすると、実は、Tシャツつくろうとなった時に、メリノについては100%だと保形(形の維持)が難しいし、洗った時に斜行(ねじれ)もするし、縮むし。やっぱり分厚い感じもするんですよね。

萩:100%だと生地の弱さも感じますよね。

吉:けど、参考にしたものがあって、だいぶ気に入って10年近く着込んでるけど、穴も開いてないし、そんなによれてない。なんなら縫製糸の方がダメになったり焼けて色が変わったりしてるけど、生地自体はダメになってないんですよ。街でも、ザック背負って山でも使ってましたけど。そのウールの概念が変わったTシャツが、ウール79ナイロン21なんですよ。

西:その同じ割合の生地に、たまたま出会えて。ウールにポリエステルが入ってるのはよくあるけど。

J:ナイロンの特性ってなんでしたっけ?

吉:硬いけど、形が維持できる。

西:摩耗に強い。

吉:あと疎水性があるんですよ。水を嫌がって弾く。

J:ウールも弾く?

吉:ウールは感覚的に最初弾くんですけど、一回濡れてベッチャっとなると乾きにくいんですよ。ウール100%じゃなくてナイロンを混ぜることで速乾性が出ます。

 

・感覚派と感覚派

 

萩:一緒に作りながら、Jさんから見た二人ってどんな感じですか?

J:西岡さんは感覚的に正しい感じ。根拠ないけど、なんか合ってる気がする。

吉:慎重ですもん。けど感覚派ですよね。長嶋茂雄タイプ。結果も出すけど、それを説明してくれ言うたら、ビューンて来た球をバーンって打ったらホームラン打てるから、っていう。

J:こっち(吉田)も感覚派やけど、ちょっと違う。

吉:感覚派やけど、明後日の方向に行ってしまうことがあるんですよ。

J:ただ最初に飛び込んでくれるのが良いところかな。

萩:というと?

J:ファーストペンギンなんですよ。氷の上に沢山のペンギンがいる中で、海の中にはどんな危険があるかわからない。けど、何の根拠もないけど、ポーンと飛び込んでくれる一羽目で、突破力を持ってる。けど、そこにあんまり根拠はない。

西:褒めてるのか、けなしてるのか(笑)

J:大企業勤めしてると、西岡さんの感覚はないかも。こうだから、こう。こうしたら心配、とか思うけど、それを私はここで言ったらあかんなって思う。西岡さんの感覚的なところを活かしたいと思うから。チャレンジして、人の声も聞いて、小回り利かせて方向性も変えられるし、どんどんやって行けばいいかなって。信じてやっていきたいなって思う。世の中の常識にとらわれず。

吉:西岡さんはすぐにアープデートされますからね。

J:勤め先にも、毎回言うことがコロコロ変わるって言われる上司がいたけど、自分は全然そんなこと思わなくて。横で見てるとなぜ変わったかの理由もわかる。最後しか見てない人には急に変わるように見えるんやろけど。

吉:ちゃぶ台がひっくり返る前の予兆はありますよね。(笑)

 

・日々進化

 

吉:あと、ビーニーが出ます。UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)でも耳の隠れるニットキャップは必携装備品なので。Tシャツのように生地を別注したわけではなく、メリノでもないんですけど、こっちは防寒機能が優先なのでウール100%で作りました。

グレーとカーキの2色展開なんですが、ちょっと難しい問題があって。

西:同じパターンなんですけど、生地の伸びの違いの問題で、グレーが小さく感じる。商品として、売るべきがどうか悩んでます。

吉:ちょっと深さがないんですよね。耳の下が出る。フィット感は良いけど、深さがもうちょっとあって欲しい。

西:もう出来上がってるから。どうやって小さいサイズの方を売るか。

J:お店で対話しながら、理解してもらった方に買ってもらえたら良いけどね。キッズや女性で頭の小さい方に。

西:納得できないものを出すのは違うから。ただ、この小さいサイズのグレーについては処遇を検討しています。

吉:グレーを作り直しますので、少し発売が遅れてしまいます。ごめんなさい。*2023年9月30日発売予定

吉:何回も何回も試作して、微調整に微調整を重ねた結果、最後の最後で上手くいってなかったっていう。

J:そうやって軌道修正していけるのもユーザーの顔が見えてるから。それが良いところだと思うし。お客さんには色んなことを言って欲しい。絶対これってないし、出してみてお客さんの声を聴きながら変化していくのも想定しながら、自分もパターンを引くみたいな。簡単には答えは出せないし、決めつけてはいけないと思いながら。

西:日々進化していかんとね。まだまだ生地もパターンも勉強中で。

J:今の時点でいちばん良いと思うものをやってる感じ。進化していく可能性を自分たちも感じながら。お客さんと接しながら、milestoneを買ってくれるのはこういう人なんやっていうのをもう少し深く知りたいかな。

吉:『信越』レース前に配信したインスタライブの後は、出走するお客さんからも、問い合わせ頂いて。

N:そういえば、これランナーとペーサーのクロストーク?(笑)

*吉田100マイル出走 西岡100マイルペーサー

Jさん110キロ出走 萩原110キロペーサーでした。

吉:PatagoniaやThe North Faceもアウトドアメーカーは、どこも最初は創業者がめっちゃやってて、その人が欲しいもの、要ると思うものを作ってきたのがスタートだったはずなので、milestoneもそうありたいですね。

萩:今がmilestoneの黎明期ですね。

西:まさに夜明け。Daybreakやね。

吉:ファストパッキングとかをやり出すと、ポリエステルのTシャツだけでは、なかなか難しいなと思う部分があるので、天然の羊の力を借りる必要性を感じます。こないだ出したヘッドランプ『MS-G3』『MS-G4』も登山や長い縦走に使ってもらいたいモデルですし、メリノシリーズもそっちかな。トレランで上位を狙う人がレースで着るってよりは。

西:普段使いでも着て、山で夜を明かして、翌日も着て欲しいね。

 

 

今月は信越五岳(Shinetsu Five Mountains Trail 100mile/110km)に参加された方や、トレイルサーチでゼッケン番号を追って、応援されてた方も多いかもしれませんね。100mileの完走率は40.2%、110kmは38.3%だったようです。ゴールへ辿り着けなくても、ひとり一人にドラマがあって、DNS(Did Not Start)やDNF(Did Not Finish)にも葛藤と決断があって。なんて残酷な「ノンフィクション」なんだろうと。それも全ては、次への伏線かもしれない希望もあって。しばらく離れていたけれど、レースの面白さを現地で思い出させてもらいました。

今回はパタンナーも登場して、ウールの新商品についてたっぷり語ってもらいました。服好きにとっては縫製の細かい話は興味津々で、これからも新しいアイテムの登場が楽しみです。

まだまだ暑いですが、滝汗をかかずに済む秋の山へ、Daybreak Merinoで行くのが待ち遠しいですね。

ではまた次回、お楽しみに。

文・構成/萩原 健

 

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