第1回:おしえて!マイルスト〜ン「milestoneはヘッドランプメーカーです。」(後編)

2023/01/27 UP | POSTED BY milestone

寺田町のmilestone

 

N:アメリカの展示会OR(アウトドア リテイラーショー)にトレイルマスターを持って出展してた時に、PETZL社のペツルさんにお会いしたことがあって。

左から:ペツルジュニア、Mr.ペツル(社長)、西岡

 

Y:ペツルって名前なんですね(笑)

N:そやで(笑)御一行様がうちのブースに来られて。雑誌でPETZLの社長の顔は見たことがあって。ヘッズやから(笑)嬉しくて。握手してもらって、お目に掛かれて光栄ですと伝えたんよ。そしたら、どういうコンセプトで作ったの?、なんで電球色なの?って訊ねてくれて。これは唯一無二、「グッジョブ」とペツルさんが言ってくれて。オリジナルなもん作ってて良かったなと。お礼のメールしたら、ちゃんと返事が来た。UTMBでお会いできたら嬉しいですと書いたら、自分は行かれへんけど、息子に会いに行くように言うとくって。息子もペツルさんやけど(笑)。そしたらUTMBで会えて。

Y:ええ話ですね。

N:海外はそのへんが気持ちがいい。翌日にはBLAK DIAMONDの開発のシニアデレクターがブースに来てくれたこともあって

憧れの世界のBLAK DIAMOND。こっちは寺田町のmilestoneやで(笑)。向こうはクソでかいブース構えてて。自分の作品だよ、って新製品について教えてくれた。2019年だったかな。トレイルマスターのパッケージを見て感動してくれて、目ん玉飛び出してた(笑)うちもやるべきや言うて。

Y:「PULL SLOWLY ENJOY!」って書いてる通りにゆっくり引いたら、日の丸とランナーが動きますよね。

N:写真のランナーは土井さん。さっき言うてた通りランタイムのグラフも書いてある。普通はメーカーからしたら見せたくない話やけど、自信あるからありのままをさらけだそうと。このトレイルマスターがあったから、自分もトレイルの業界に入れたし、ほんまにやって良かったと思ってる。パッケージの組み立ては、ほんまに大変やったけどね(笑)

Y:「LIGHTING FOR YOUR WAY」って書いてますね。

N:そう。「FOR」有りの時代。アメリカの展示会でお客さんに言われて。「フォー要らんのとちゃう?」て。それで「FOR」削って。

Y:柔軟(笑)。ブランドのタグラインはだいたい三文字ですもんね。「LIGHTING YOUR WAY」。「FOR」が無い方が語感が絶対良いです。

N:アップデートしていった方がええし、響きが良いから変えて良かった。

Y:アップデートと言えば、『MS-i1』はトレイルマスターに替わるモデルという位置づけになりますよね。1000ルーメンですし。

N:1000ルーメン含めて四段階の明るさなんやけど、2分掛けてじわじわ明るさを落としていく。人の目には気づかないくらい。暗いかなと気づいて一回ボタンを押せば、次の段階のスタートの光量になる。足元が危ない時に、ズキュンと明るくなる。無駄に明るい時間が短くなるから、理にかなった無駄のない省エネ的なモデルになったかな。

Y:明るさが落ちているのにしばらく気づかなくて、下りでスピード出した時、なんか暗ない?と思ったら押す感じで使ってます。歩いてる時、登りで明るさはそんなに要らないし。

N:バッテリーを2本も3本も持たずにスマートに行きたいし、2分で明るさが落ちるのは隠してるつもりもないし、わかったうえで使ってほしいと思ってて。今のところクレームもなく機嫌よく使ってくれてるのかな。まだまだ自分的には満点は出せてなくて、改良したい点はあるんだけど、今の時点で自分が満足できる形になったと思ってる。

Y:トレイルマスターがあったからこそ、MS-i1を出せたんでしょうね。NHKでやってたUTMBの番組で、日本の選手が結構つけてくれてましたね。

N:ちっちゃなメーカーやけど、世界で勝負するランナーが日本のメーカーのヘッドランプつけてくれてるのは嬉しいし、やってて良かったなと思う。

 

地図とコンパスと…

 

Y:MS-i1とトレイルマスターを比べたら軽くなってる気がするんですけど、スペック上は5gだけなんですよね。

N:トレイルマスターは本体105gとバッテリー75gでトータル180g。MS-i1は本体125gとバッテリー50gでトータル175g。予備バッテリーを持てば持つほど、かさも含めて差は大きくなるね。

Y:ロングレースになると予備込みのトータルの重さが大事ですよね。MS-i1のバッテリーは、他のメーカーとの互換性はありますか?ってよく聞かれるんですけど。

N:バッテリーをカートリッジにして他メーカーのものをハマらなくしたのがトレイルマスター。かさばって重くなって、最終的に作れなくなったけど(笑)。MS-i1はシンプルで削ぎ落したものになってる。保証できないから、他のバッテリーは使ってほしくないね。

Y:軽さっていうと、ULハイカーさんにもよく使ってもらってるMS-G2が在庫切れしてましたけど、年末入って来ましたね。

N:4月頃に発売予定のMS-G3とMS-G4 ※5は、緊急時に充電しながらミニマムな明るさで使えるモデルになってる。USBがタイプBからCに変わって急速充電ができるようにもなるし、ハイキング向けモデルも進化してる。

※5 MS-G3、MS-G4については、後日きちんとご紹介します。乞うご期待。

Y:そう言えば、登山を始めた頃に会社の先輩に岩湧山に連れて行ってもらってたんですよ。五人くらいで登って。山頂で料理してお昼ご飯を食べて、昼寝したんです。起きたら、「やばいこれ、暗くなる!」って。ライト持って来いとも言われてなかったし、持ってなくて。そしたら「私ちゃんと持ってるから大丈夫やで」と先輩が言うから安心して山を下り出したんですけど、すぐ暗くなってきて。先輩がライト付けたんですど、バッテリーが30分も持たんかったんですよ。それで真っ暗になって!結局、みんなで携帯のライトで照らしてなんとか下りたんですけど。「山はこういうこともあるから、ファーストエイドとライトは絶対持っとかなあかん」て言うといて、すぐ電池切れたから。どの口が言うたんやろなと思ったけど(笑)。山行くならライトは必須ですね。

N:せめて予備バッテリー。セカンドライトも持っておいて欲しいね。地図とコンパスと?

Y:ヘッドライト、じゃなくてランプ(笑)

N:いや、そこは「地図とコンパスとマイルストーン」やねん。

Y:失礼しました(笑)

※「地図とコンパスとマイルストーン」は、milestoneのキャッチコピーです。

深いですねぇ。今回は、どこまでも奥深いヘッドランプのあれこれについて、おしえてもらいました。冨士灯器(株)100年の歴史をたどると、カーバイトランプからガス、電池へと燃料は移り変わっても、あったかいオレンジの光はずっと灯り続け、引き継がれているような気がします。マイルストーン(道標)をひとつずつ築きながら。

次回以降も、milestone製品をひとつずつ紹介していきます。お楽しみに。

 

文・構成/萩原 健

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